1.遺産分割調停と不動産鑑定士
当社にはほぼ毎年、遺産分割協議がまとまらずに不動産鑑定評価を依頼したいとの依頼が来ます。
近年の地価上昇を反映しているのか?はわかりかねますが当社においては
遺産分割に伴う不動産鑑定評価の仕事は増加傾向にあります。
(1)遺産分割とは?
被相続人の死亡によって相続が開始し被相続人が所有していた財産を相続人間で
財産分けします。この時に遺言・限定承認・相続放棄がない場合、相続人同士が集まって遺産分割協議を行います。
※法的に詳細な説明は弁護士、司法書士等の専門家にお聞きください。
弁護士、司法書士、税理士、公認会計士等の専門家が関与している場合もままあります。
一次相続、二次相続と・・・兄弟仲良く共有名義に不動産がなっていたりもします。
日本各地に数十人の権利者が散らばっているケースもあります。
当事者間で納得し合意できればよいのですが、紛糾し合意できない場合もままあります。
遺産総額がそれほど多くはなくても紛争に至っているケースも普通にあります。
合意できない場合には家庭裁判所の調停に持ち込まれ更に合意できない場合、遺産分割審判手続になります。
(2)なぜ不動産の鑑定評価をする必要があるのか?
Ⅰ.相続に占める不動産のウェイトの高さと現金・預貯金との違い
日本の場合はたいてい相続財産に占める不動産価格の割合は高いです。
現金・預貯金はほとんどないが相続不動産は複数の県に複数個存する
という場合もあります。
現金、預貯金であれば1千万円残高があれば誰が見ても1千万円です。
いや、その現金、預貯金は1億円の価値があると主張する人はいません。
Ⅱ.不動産価格は変動するものである
ところが不動産の場合は評価時点(価格時点)によって絶えず不動産価格は上昇したり、下落したりと
変動します。
例えばリーマン・ショックの後に不動産価格はものすごいスピードで下落し
アベノミクスによって素早くまた不動産価格は上昇しました。
対象不動産はほぼおなじ状況なのにも関わらず全く時価が1年前と現在では大きく異なるといった現象が発生しました。
相続開始時から数年経過した場合、時価が大きく変動するのが通常です。
Ⅲ.不動産価格の評価基準の多様性
さらに評価の基準となる価格も数種類存在します。
当事者が合意できればどの価格でもよいのでしょうが、不動産の場合その基準となる価格が複数存在するので揉めるのです。
価格水準
①地価公示価格、地価調査価格
②相続税路線価
③固定資産税評価額
④不動産業者による無料査定
⑤不動産鑑定士による不動産鑑定評価
上記②~③は本来的に納税のための評価額です。
価格水準は概ね①を100とすると②は80,③は70の割合で設定されており価格の上昇・下落が激しい場合には時価との乖離が大きくなります。
上記④はよく鑑定評価の依頼時に参考資料として当社にも持ち込まれますがその利用には注意が必要です。
過去にあったケースとしては
(1)売りの仲介依頼を取得したいがための高め査定
物件を売ろうとするとき複数の不動産会社に無料査定をお願いした時に査定金額の高い不動産会社に仲介依頼したくなりがちです。
そのことを不動産会社はよーーーく知っています。
なので高め査定をする不動産業者は多いです。
具体的には
成約事例でなく売り事例を使用する。
流通性調整で+10%する。
類似性の無い売り事例を採用する。
過去に様々な無料査定書がありました。
(2)対象不動産の個別性を考慮していない無料査定書
対象不動産は敷延なのに全く減価をしていないもの。
対象不動産は規模大なのに全く減価をしていないもの。 等が過去にありました。
この無料査定書って現地を見たの?と言いたくなる無料査定書も過去にたくさんありましたが
無料なので文句を言えないですね。
しかも この無料査定書は不動産の鑑定評価に関する法律にしたがったものではありません。とちゃーーーーーんと書いてあります。
あくまでも無料査定書は売りの仲介媒介を取りたいための営業ツールにすぎないということです。
Ⅴ.不動産の共有持分は現金や預貯金の分割と異なりオススメできない。
現金や預貯金は相続人間でそれこそ1円単位で公平に分割、分配できます。
しかしながら不動産の場合は公平性を重視して不動産を相続人間で仲良く
共有持分にしたりすることは理念は素晴らしくても、法的には可能であっても現実的には当社はオススメできません。
後で何かと困ることになると思います。
Ⅵ.代償分割
そこでよくあるのは親が死亡して相続発生した場合等によくあるのが同居をしていた長男が自宅を単独相続し
代償金を他の兄弟に現金で支払うケースです。
※代償分割といいます。法的に詳細な説明は弁護士や司法書士の先生にお聞きください。
この場合も自宅を実際には売却しないのでどうしても不動産の評価という問題が発生してきます。
Ⅶ.遺留分の侵害・算定の基礎として不動産鑑定評価
遺留分が侵害された!!遺留分算定だ!!というケースも相続財産に不動産が含まれている場合
不動産の評価という問題がまずは浮上してきます。
相続不動産の評価が不明だと遺留分侵害の存否とその程度が判定できないからです。
Ⅷ.遺産分割の場合の不動産鑑定評価の費用負担
遺産分割で不動産鑑定評価を実施した場合、誰が不動産鑑定士に鑑定報酬を支払うか?
費用負担をするか? という問題は事案によりケースバイケースといえます。
つまり相続人全員で鑑定料を支払うケース、一部の相続人負担で鑑定料を支払うケース
財産管理会社で鑑定報酬を支払うケース 様々なケースがあります。
2.相続税納税と不動産鑑定評価。
相続税納税の時には一般的には財産評価基本通達によります。
相続税路線価や固定資産税の評価額は本来的に納税のためのものであります。
全国画一的に、一律的に、公平に大量評価を実施するためのもので不動産鑑定士は陰ながらその手助けをしています。
当社も微力ながら公的評価に参加させていただいております。
3.相続は総合力が大切。
あおかぜ不動産鑑定事務所㈱では他の専門家、税理士、司法書士、弁護士、行政書士、公認会計士、一級建築士等の連携を行った上で
不動産鑑定評価を実施してまいります。
法律、裁判、税法、不動産の評価 全てに万能な人はなかなかいないからこそ専門家間の連携が大切と考えています。
また、遺産分割の調停では使用貸借権、使用借権の評価など通常の不動産鑑定とは扱いが異なる部分もあるからです。
過去のケースとして他の専門家、税理士、司法書士、弁護士、行政書士等の専門家と共に相続人のところに同行して
不動産鑑定評価書の説明を行ったケースもままあります。
資産税に強い税理士や相続に強い弁護士の紹介もできますのでお気軽にご相談ください。
相続時、遺産分割の不動産評価はあおかぜ不動産鑑定事務所㈱へ
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